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I'm Lovin' It

「FEVER PITCH」とタイトルされたFBのエントリ
手書き文字の文章と手描きのイラスト
それは、友人M嬢のエントリだった

彼女は先月仕事でロンドンにいた
仕事の合間にエミレーツでサッカー観戦  
そう、アーセナルのホームだ

「FEVER PITCH」
『父親が子どもから拒絶される。そのもっとも残酷な形は、我が子が自分の嫌いなチームのサポーターになってしまうことだ。息子がマンチェスター・ユナイテッドのファンになってしまったらどうしよう』
手描きイラストは、スタジアムで見かけた
"アーセナルを応援する、おじいちゃんと孫"


これをみて思い出したことがある

2000年10月下旬
遅い夏休みをとってNYCに遊びにいっていた
MLBワールドシリーズがヤンキースvsメッツのときだった
街中が沸き立つ感じではなかったが・・・
通りを「Fuck Yanks」とペイントしたクルマが走ってたりしていた

ミュージカル「RENT」を観たあとの遅い夕食に入ったレストラン
日本ならファミレスかなっていう気軽な雰囲気の店だった

レストランのTVでは勿論、ヤンキースvsメッツの生中継
店内は静かでそんなに盛り上がっていはいない
熱心なファンはスポーツ・バーで騒いでるんだろうな


隣の席にはイタリア系な風貌の親子4人がいた
構成は45才位の父親と同年配にみえる妻、15才位の娘と10才位の息子
父親には疲労感がまとわりついていた
「戦いは不毛」と悟ったような頭髪の欠落具合に悲哀が漂う中年男
妻はでっぷり肥えたブラウンの髪の女性で、白のワンピースはスピードスケート・ウエアのように身体に張り付いていた
娘もみごとに同じ体型で白のワンピースが身体に張り付いていた
母と娘はサイズが大・小のマトリョーシカ2体を並べたみたいだ
息子は、ホントの子供なのってくらい似ていないブラウンの髪のハンサム

9回表でヤンキースの攻撃だけど、メッツ2点差リードですでにツーアウト
そう、ヤンキースの敗色濃厚
父親はテーブルに頬杖ついて泣きそうな顔で黙ってTVをみていた
ホントに泣き出しそうな顔だった
迷子になった幼児が心細さ満杯なんだけど必死で涙をこらえてるような表情
息子は腕組みをしてやはり泣きそうな顔で黙っていた
母親と娘はTVには全く視線を向けず食事の手を止めない
父親と息子は何も食べていなかった

そのときだ
ヤンキースのバッターの打球はボテボテのセカンド・ゴロ
それをメッツの2塁手がエラーして1塁セーフ
ハッキリ言って、たいした場面じゃない、もう2アウトだし

するといきなり父親と息子は満面の笑顔になり立ち上がった
「Yes ! 」2人同時に叫んだ
父と息子は右手と右手でハイタッチ、それから両手でハイタッチしてハグ

エッ、そんなに嬉しいか?
母親と娘は一瞬も手を止めずに同じペースで食べ続けていた

SANY0165@.jpg


翌日の夜はマディソン・スクエア・ガーデンにいた
そうNHLニューヨーク・レンジャースのホーム・アリーナだ
人気がないのかガラガラの客席
ボクの右前方にいた父息子が目についた
劣勢のレンジャースがなんとか1点をもぎ取る度に
2人は勢いよく立ち上がった
父親は右側の息子に右手掌をさしだした、握手をするように
息子は父親の右手掌に自分の右手掌を打ち付けた、平手打ちのように
連射で10回も ボクは思わず数えていた
するとすぐに今度は父親が息子の右手掌に平手打ち10連発
ハイ・タッチじゃない、ロウ・タッチだった
この2人交互ロウ・タッチ10連発の儀式はレンジャースに1点入る度に繰り返された
実はこの試合レンジャースのボロ負けだった
それでも1点に沸き、歓喜を周囲に発散する父息子


ボクが思ったこと

彼らはチームに「夢中」になってるんじゃない
「愛」してるんだなってこと

熱力学的に考察すると・・いや単なる空想だけどね・・
夢中になるより愛するほうが
必要な熱量(カロリー)が大きいだけでなく
化学反応で発する熱量(カロリー)が大きいよなって思った
そして父と息子の化学反応が発散した熱量はとりわけ大きかったんだ

NYCは通りのそこかしこに、高カロリーの愛が漂ってる街なんだなって思った


地下鉄の通路で歌っていたアフロ・アメリカンな青年
ラジカセから流れるドラムのブレイクビーツに合わせて
アカペラで歌っていたのはエルトン・ジョンの"Your Song"
彼の声を聴いたとき、気圧が少しだけ重くなりそして熱を感じた
靴の重量が200g重くなったような気圧
閉じられた空間なのに肌に陽射しを感じるような熱

ああ、コレは歌っている彼と彼を取り囲んだヒトたちが発する
高カロリーな愛なんだな


翌日ソーホーのアップル・ストアに入ったときウキウキした
そこにスティーブ・ジョブスが立っていて
緑色のアクリル階段に彼が立っていて
彼が全力を尽くして愛したプロダクトを自慢してるような気がして

彼の高カロリーな" Whole Lotta Love "でストアが満たされてる気がして



2000年10月にリリースされたばかりだった
U2 のアルバム「All That You Can't Leave Behind」
タイムズ・スクエアのヴアージン・レコードで何度もかかっていた曲
U2 「Beautiful Day 」



【蛇足】

" 愛は高カロリー "

いろいろたくさんはいってるから?

いえいえ 全部はいってるから



※蛇足の蛇足

今回の蛇足はキャッチコピーふう

そして今回のタイトルは某"メガ"企業の世界同時展開キャッチコピー
でもこれはファストフード販促キャンペーン目的に書かれたショート・ストーリーじゃありません



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