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A Man Talking

日曜日 06:00 コンビニの店内にいた
ロードバイクで走り出す前の炭水化物補給が目的
おにぎり2個・サンドイッチ1個・牛乳1パック・缶コーヒー1缶を購入し店外へ出た
ゴミ投入ボックスが並んでる所で立って食べるつもり
食後にすぐ包装材や缶を捨てられるから

「イイ天気ですね・・?」
1人の男に話しかけられた・・返事ができなかった
だって、曇り空だったからだ
かまわず男は「ホントーに、イイ天気ですね・・」
また返事が出来ない 曇り空のままだからだ
数時間以内は「曇りのち曇り」のままだ、きっと、殆ど、いや絶対に
「イイ天気ですね・・?」
「まあね、悪くはないね・・」3回目じゃこっちも根負けして認めてしまった

ボクが1個目のおにぎりを食べ始めたときには、もう1人の男がいて2人で話し合っていた
「盛岡の祭りもイイッすよー、さんさ踊りに来てくださいよー」
そう言われたもう1人の男は彼と握手するとクルマに乗り込み駐車場を出て行った  徳島ナンバーだった
「阿波踊り」と「さんさ踊り」について早朝からディスカッションしてたのか?

1人残った男が、立食い朝食モグモグ・ゴクゴク中のボクに話しかけてきたんだ

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その男は・・不穏ではないが、うろんな感じ
うろんに感じた理由はそのファッションだけじゃなかった

「うろんの理由」その1:ファッション
細身で身長170cm前後
黒のニット帽 耳元に毛髪はない・・スキンヘッドか・・?
普通な黒フレームの眼鏡
トップスのレイヤーは青のポロシャツの上に黒のジップパーカー
パーカーの生地はジャージー
ボトムはアディダス  グレイのオーバーサイズなハーフパンツ
足元は素足に緑のサンダル
ジャージー生地のパーカーが凄かった
パーカーの袖から背部にかけて菊と牡丹がからみ合って描かれていた
絵柄のタッチは和風  ちょっと沈んだトーン
そう、腕から背中一面に広がる和風のタトゥーのよう

「うろんの理由」その2:酔っていた
彼の眼が充血していて、あれ?って思ったら
足元に置いてあった袋から500mlビール缶を取り上げ飲み始めた
ゴクゴク喉を鳴らして
ビニール袋にはまだ3本入ってる
既に何缶を飲んだんだ...?

29歳だと言った彼の独白が始まる 
天気についてディスカッションするつもりではなっかったんだ

とぎれとぎれな独白  だって酔ってるから彼
「オレ、トラックの運転手なんすよ、どうでもいいんすけど・・」
「今日ね、"彼女さん"の両親に結婚をね、許してくださいって、お願いする日なんですよ、オレ」
「向こうの両親はお店を経営してるんですよ・・居酒屋・・そこで今日会うんですよ」
「"彼女さん"とは交際2年、同棲1年で、同棲するときにですね、同棲の承諾はむこうの両親からもらったんですよ、オレこう見えてもキッチリしたいんです、そういうとこ」
「ビビってるんすよ、オレ。向こうの両親に会ったら何て言えばいいか、ビビってるんすよ、どうしたらいいでしょうね・・」
「昨日の夜からビビって眠ってないんですよ、全然。そんで朝5時からここで飲んでるんすよ、変ですよね、笑っちゃいますよね、ご両親にどう言えばいいんすかね?」
「キッチリしたいんすよ、でないと結婚できないんすよ、キッチリ挨拶して、許してもらってからでないとオレ・・」

北海道富良野市在住のあの方
黒板五郎さんと話してるような気分になってきた
五郎さんは確か、蛍の交際相手に会う前夜に純と酒を飲み、翌日に路上の売店で新巻鮭を買って交際相手に持って行くという、'80~'90年代には既に希少となった「不器用」ぶりを発揮していた

期待に反して、コンビニ前ビール男の口は突き出ていなかったし
ボア襟のドカジャンも着ていなかった

彼の独白は続いていた

「ヤンキーに絡まれても、ヤクザに絡まれてもビビったことないんすよ、オレ。
ビビんないすよ、全然、でも"彼女さん"のご両親に結婚お願いするのはビビるんすよ」
「あと2時間したら、仕度して出かけなきゃいけないのに・・飲んでるんです、変ですよね、
笑っちゃいますよね」
ボクはおにぎりとサンドイッチを食べ終わると
「それじゃ、頑張ってね・・」と言って、その場を離れた


帰り道、小さな公園のベンチに座りちょっと考えた
缶コーヒーを飲みながら考えた

おにぎりとサンドイッチには牛乳じゃなく缶コーヒーだったかな?
まっ、この世界に"完全"はないからな・・

いやそうじゃない、彼の今日これからの展開を考えた

どんな服装で会いに行くんだ? 勿論、着替えるよね?
菊と牡丹のパーカーはないよなー

缶コーヒーのカフェインのせいか牛乳より脳が反応し始める
キャブレーターが液体カフェインを霧状にして脳の深い所へ吹きつけていた

白いシルクのスーツに着替えたりして・・
なぜ白かって?

それはね
袖から背部にかけて描かれた菊と牡丹が映えるから
絵柄のタッチは洋風
蜷川実花の写真のような彩色と階調の菊と牡丹がプリントされていた
ビタミンカラーの菊と牡丹が描かれた白いスーツ
ダメだ、そんなことしちゃ 
"彼女さん"のご両親のほうがビビるぞ、そんなことしちゃ
ガーリーでビタミンカラーな・・・それはキミには無関係なコンセプトだ
いや、そんな問題じゃない 
この状況で、その酔った眼と顔に、そのスーツじゃ妖しいパフォーマーだぞッ

もう1度コンビニに戻って注意しようかな?

面倒なので帰ってきた


歩いていると彼の声が聞こえたような気がした

「オレ、ネットオークションで買ったんすよ、蜷川幸雄演出「マクベス」ロンドン公演っすよ、マクベスの衣装を買ったんすよ、それをね、今日・・」

ダメだ、そんなことしちゃ 



いつもシニカルな歌詞世界を展開する連中なので、ストレートなラブ・ソングは照れるのかな?
でも、この曲は間違いなくラブ・ソングだと思います
!0cc 「 I'm Not In Love 」



【蛇足】

青年よ
キミの誠意が相手のご両親に伝わらなくても
キミの一途な気持ちは伝わるはずだ、きっと、多分、もしかすると・・

確実にご両親に伝わるのは・・
キミのビビリと酒臭さだ

青年よ
熱いお湯のシャワーを浴びてしゃきっとするんだぜ
歯ブラシに歯磨きペースト多めに盛ってゴシゴシ磨いてさ
口臭消しスプレーも多めだぜ

それから白いシルクのスーツはダメだ

ビタミンカラーの菊と牡丹は絶対にダメだ

それと、彼女に"さん"は要らない


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