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A Crosswalk

5月16日早朝 06:30  ボクは職場へ向かうクルマの中

交差点にさしかかり右折しようとしたが、信号が黄色から赤にかわりクルマを停止した
周囲にクルマはボクだけ  
歩道には男が1人だけ歩いていた

彼は、ボクが右折して進入するはずの道路の歩道を"右から左へ"向かって歩いていた
車内のボクから30m位は離れていた

年齢45歳くらい身長は170cmくらいに見える 
髪は長くもなく短くもない、黒髪のウエーブはデザイナーのI.M.氏のよう
黒いサングラス、ジャケットとパンツも黒そして靴も黒

ボクは思った 黒が好きなんだね彼

大きめのメッセンジャー・バッグのようなショルダーバッグも黒  
徹底した黒装束  だから目立った、彼の左手の煙草が
彼は一定の時間間隔で煙草を吸い一定の間隔で煙を吹き出し歩いていた
彼の内燃機関に煙を送ってるかのような規則正しい喫煙

ボクは思った  顔を黒く塗って黒手袋してくれてたらヨカッタな
白い煙を吐き出す3Dな影のようだったらなぁ、おしいなぁ、彼

SDIM1322@.jpg


エコの意識が行き渡ったか、社会マナーの意識が高まったのか
路上には吸殻どころかゴミも殆ど落ちてません
煙草を吸いながら歩いてる人は殆ど見かけなくなりました
早朝でヒトも少ないから彼は吸っていたのかな・・?

交差点の横断歩道の前で立ち止まると周囲をキョロキョロ見ていた彼
ボクの正面の信号は赤、ボクから見て"右から左へ"向かって歩いてきた彼から見える正面の歩行者信号は青
それなのに"白ボーダー柄"の横断歩道を渡らずに、彼は周囲を見ていた

周囲を見ていた顔が次に正面を見据えた

すると
彼は右手を挙げて横断歩道を歩き始めた
左手に煙草を持って吸いながら、右手を挙げて歩いていった

公共マナーには無頓着だが交通ルールには厳格な方だった

そうか、渡る前にキョロキョロ周囲を見ていたのは
『右見て左見て安全確認をしてから横断歩道を渡りましょう』だったんだ

ボクは勿論「ゲラゲラ」笑った  
30秒間位は呼吸を忘れて笑い続けた

歩きながら煙草を吸う人は殆どみかけなくなったけど・・
周囲にクルマ1台だけなのに、左右を確認してから右手を挙げて横断歩道を歩く中年男を見たのは初めてだ

煙草を吸い煙を吐きながら、右手を挙げて横断歩道を歩く、全身黒ずくめの中年男
この「歩行」は現代舞踏なのか? 
この「行動」はピノ・バウシュ演出・振り付けのパフォーマンスなのか・・?
期待したが、彼は何事も無く横断歩道を渡りきってしまった

ランウェイを歩くモデルの"キレ"もなく、ダンサーのステップもなく、舞踏家のハプニングもなく
高揚も膨張も歓喜もなく、混沌も破綻もなく彼は横断歩道を歩いていった

んっ・・?もしかして"能楽"の方か?
右手を天へ向けて挙げ、歩を前へ進めるのは能楽の作法なのか・・?

06:30の盛岡で、能楽師のオトコが煙草を吸い煙を吐きながら右手を挙げて横断歩道を渡っている・・可能性は?

極めて低いだろうね

何故なら、彼が右手を挙げて歩く姿には「幽玄」が漂っていなかったからだ、微塵も



早朝の路上で交通マナーを守る彼をみて
" out of control "な感じがカッコイイ彼らの曲が聴きたくなって・・

Aerosmith「Jaded」



【蛇足】

このブログで展開されるストーリーに含まれる事実の含有量はというと・・・

殆ど実体験に基づいた・・・four nines(99.99%)  
南アフリカ産ダイヤモンドが持つ純度なみの事実含有量なストーリーも時にはあるけれど

ビールやワインのアルコール濃度くらいな事実に想像・空想・考察がないまぜなストーリーが多くて

φ(空集合)な事実
つまり、純度100%・夾雑物一切なし・ピュアモルトのような完全フィクションで展開されるストーリーもあって

そして今回のエントリは?  
ボクが目撃した光景は100%事実です



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