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Stand Up

ロードバイクで・・
ドロップハンドルの下側を持った前傾姿勢で長時間走っていると首が凝り痛くなる
ロードバイクから降りて・・"立つ"と・・首の凝りは楽になる



昔々のこと・・太古と原始の区別がつかない時代のことだ

闇が降り、辺りは静けさに包まれていた
僕等の"始まり"は洞窟の中にいた

焚き火を囲んでいる集団に、長老が話しかけていた
「我々は、火を使えるようになった、道具を使えるようになった
 言語を使いコミュニケーションと伝達する能力を手に入れた」
「・・・・・・・・」
「そして・・言語を使い"考える"ことを始めた」


「みんな・・首が凝らないか?首が痛くならないか?」
「・・・・・・・・」
「考える習慣を得た我々の脳が発達し・・頭が重くなったんだ」
「・・・・・・・・」
「両腕を前にだらりと下げたこの前傾姿勢では・・
 前に突き出した首では・・重くなった頭を支えるには不都合だ」

集団はざわついた "うん首が凝る"  "首が痛いんだよな、最近"

長老は言った
「立ち上がろう」
「・・・・・・・・」
「立ち上がって・・重くなった頭を首骨、背骨、腰骨、そして足で支えるんだ」

長老は・・声を大きく張り上げ、きっぱりと言った
「皆の者・・立ち上がるんだ!」

こうして僕等の"始まり"は直立二足歩行を始めることになった・・かな?


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長老は言った
「我々の脳は今後も刺激を得て、ますます発達し重くなる・・
 見る・聴く・感じる・・話す・・考える・・語る・伝える・・
 考える・・考える・・考えるんだ・・」
集団は口々に呟いた 「考える・・考える・・」

長老は皆をぐるりと見渡すと・・言った
「我ら・・"考える"一族の・・キャッチコピーをつくった!」
「オーッ・・・」

「 "我思う、ゆえに我あり" 」

集団から拍手がわき起こり、皆が大きな声で唱和した
「われ・・おもう・・ゆえに・・われあり・・・・・」

突然、1人の男が叫んだ  「ブラボー!」

「何だ、ブラボーとは?」
長老の問いかけに、男は怪訝な顔をして答えた
「何だか分からないけど・・つい言ってしまいました・・」

長老は満面の笑みで、こう言った
「"ブラボー"・・うんうん、良い響きだ・・これから我ら一族は嬉しいとき、感動したときは・・
 こう言うことにしよう・・"ブラボー"」

集団は歓喜の声をあげた・・それは大きな叫びになった  「ブラボー!」

「我思う、ゆえに我あり・・」  
「ブラボー!」

「首の凝りが楽になったぞ・・」  
「ブラボー!」

「頭の中をいろんな考えが駆け巡るぞ・・」  
「ブラボー!」

「"モノを語り"たくてたまらない・・」  
「ブラボー!」

「洞窟の壁を枝で叩くから聞いてくれ・・心躍るリズムを思いついた・・」
「ブラボー!」

「音律に寄り添い語るのじゃない、叫ぶのでもない・・そう、歌いたいんだ・・」  
「ブラボー!」


「オレは土や樹液で顔料を作ってさ・・洞窟の壁に絵を描くことにしたよ・・
 牛や馬の絵をさ・・それでね・・遠くの牛の角は短く見えて、近くの牛の角は長く見えるよね・・」

「確かにそうだ、遠くへ離れるほどモノは小さく見える・・ブラボー !!」

「オレは考えることにしたよ・・ほら同じ重さの木と石なのに・・
 水に入れると、木は浮かんで石は沈むだろ・・あれってさ・・・・・・」

「何を言ってるか全然分からないけど・・ブラボー !!!」



Bob Marley 「Get Up ,Stand Up」



【蛇足】

マルが椅子にすわっている
左前足を肘掛に乗せ、右前足でティーカップを持ちアールグレイを飲んでいた
「まあ、オレは直立2足歩行はしないけど・・椅子に座って"猫背"を伸ばすと・・
 確かに思索が深まる実感はあるよ」


長老に促されても・・最後まで立ち上がらないヤツがいた

「どうしてオマエは立ち上がらないんだ?」

「考えることが苦手なんだ・・」

「ん・・?」

「モノゴトを深く考えるのは苦手なんだよ・・」

「いくらそうでも・・首が痛くなって困るだろ?」

「首も肩も凝ったり痛くなったことなんてないよ、1度も
 あれっ?オレの脳は・・軽いのか・・?」

「・・・・・・・・」


椅子から床に降りたマルが欠伸をしながら、こう言った

「ソイツだね・・オマエの祖先は」

「・・・・・・・・」

ボクは椅子から立ち上がり、"猫背"な背骨を必死でまっすぐに伸ばした

マルは後ろ足で首を掻くと気持よさそうに目を細めて言った

「今・・オマエが1番深く考えてることはいったい何だい?」

「冷蔵庫には冷えたビールが入ってる・・とても頃合いの良い冷え方だ・・
 今夜は・・ヒラメのカルパッチョにするか・・?
 ホヤと胡瓜の酢の物にするか・・?
 それが、今1番ボクが深く考えてることだ・・」

マルは大きな欠伸を2度すると、小さな・・とても小さな声で言った

「ブラボー」


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