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【 褒め概論 】

冬の陽がもう傾き始めた15時の文学部18講義室
H教授の特別講義『褒め概論』が始まった。

みなさん。SNSをやってますか?
ボクもFBを時々覗いたり投稿したりしてます。
自分のFB投稿に「いいね!」が少ないとイラッとしますね。
いやいや。ボクじゃないですよ…そういう人がいるらしいということであって…。

でもね。その…「いいね!」が少ないと不満に思う人は心のさもしい人ではありません。
いいですか。
人間には「褒め」が必要なのです。
人に褒められると嬉しいですね勿論。嬉しくて笑顔になりますね。
人を褒めるのも気持ち良いですね。人を褒めるときも笑顔になるものです。

褒められることが動機や行動原理になったり、原動力になったりもするのです。
そして、褒めることはリスペクトや寛容が含まれますから褒めると嬉しくなります。
だから人間には褒めが必要なのです。


ほぼ日刊イトイ新聞”の「ほめ道を往く」の巻頭言にあります。
「重箱の隅をほめたいものだ」と。
うーん。至言ですね。ここまで褒められる人はなかなかいない。
私も続きます。
「四角い部屋を丸く褒める」
「人の揚げ足を褒める」
「曲がったヘソを褒める」

コホン。調子に乗りました。ヘソ曲がりなどは褒めなくていいです。


もし…市井の人として民衆に埋もれている詩人がいるとしたら。
きっと彼は憂鬱を晴らすために丸善の書棚に檸檬を置くのではなく「褒め」を置くのだろう。
もし…酒場の人として酔客に紛れている詩人がいるとしたら。
きっと彼は呟くのだろう。
「汚れちまった悲しみに 今日も”褒め”の降りかかる」
もし…吹雪く津軽の街を寒さを忘れて歩く火の玉のような版画家がいるとしたら。
きっと彼は叫ぶのだろう。
「美しい色彩をみると全身がカアーッと熱くなるんですよ。全身全霊で色彩を褒めますよ。
 わだばゴッホになるはんで!」

コホン。調子に乗りました。
パロディをつかって褒めを解説しようとしただけで悪意はありません。


もう1度繰り返します。 人間には「褒め・褒められ」が必要なのです。
褒めて褒められて笑顔になる幸せが…大切なんです。
人は褒めで生きているといっても過言じゃないんだなぁ。

『生物が環境の変化に対応して、血液の性状や体温を調節し生存を維持する現象のこと 
 をこう呼びます。
 褒めオスタシス』

コホン。たびたび調子に乗ります…ふざけるのが好きなんです。
アワワ。もうふざけません…と、思います。


キミが…相手がつくってくれた料理を食べて言う。
「ありがとう」コレは感謝だね。
「美味しいねえ」「やるじゃん」コレが褒めだね。
感謝は礼節でしょ。人間関係に必要な心の有り様だよね。
じゃあ、褒めは何?心の表現だね。自分の心を表現し相手に示すのが褒め。
褒めは…リスペクトと寛容が不可分の感情ですね。
だから、褒めるのは気持ちいいんだね。

「Thanks」は、言うのも言われるのも気持ちがイイです。
「Good job」は、もっと気持ちがイイですね。

そして褒められると…ちょっと跳躍力が伸びる感じがする。
ほら。手が届く感じがする…あそこまで。
褒めは人間のエンジンをパワーアップするのかもしれない。


万葉集がどうしてわれわれの心に沁みるのか…。

『ひんがしの野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ』
東に曙光が立ち、西に月影が傾く…。
うん。イイね。
冬の明けがたの風景を褒めたんですね、コレ。
「オレンジ色の朝焼け…明け方の太陽。
 やっぱオマエはカッコイイなあ、セクシーだなあ!
 月、ご苦労!帰ってゆっくり寝てくれ。休んだらさ…また夕方ヨロシクな。
 オマエの冷えた美しさ…オレは好きだぜ!」

太陽を褒める。
月を褒める。
風を褒める。
水を褒める。


ずっとスライドも出さずに話してきたけど…。
えーと。最後にスライドを1枚出します。

We will sing the song on the earth, “What a wonderful world”.
(この地球に集いしボクらは声を揃えて歌うんだ。“この素晴らしき世界”を)

『陽に緑を輝かせる木々や鮮やかな赤で彩られたバラをボクはみる
 そして木々やバラはボクとキミのために花をさかせるんだ
 なんて素晴らしい世界なんだ』(訳:H教授)


Louis Armstorng 「What A Wonderful World」




講義室を出ていこうとする学生達に、H教授が声をかけた。

「ああ。えーとね。今回の聴講アンケートよろしくね。
 まっ。あれですよ。ほら。
 サクッと。ねっ。褒めましょ。気持ち良く。ねっ。ほら…」


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(著者近影)



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