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『雪の盛岡からクリスマスソング』番外篇

【 Merry Christmas Mr.Laurence 】
’83年公開の映画「戦場のメリークリスマス」のタイトル曲だ。

でも。
この曲について語るため(?)…まずは、ブライアン・イーノについて語ろう。

B・イーノのメジャーなキャリアは「ロキシー・ミュージック」のキーボード奏者、
そしてロキシー脱退後は、レコーディング・プロデューサーとして
デヴィット・ボウイ、トーキング・ヘッズ、U2、コールド・プレイ
などのアルバムを制作したことだ。
さらには、ロキシー脱退後のソロ・アルバムで展開した
前衛的現代音楽やambient music(環境音楽)の先駆者として知られる。

ここだ!
U2好きのボクが心配したのは。

B・イーノがU2のレコーディング・プロデューサーになったらしい。
その情報を耳にしたとき感じたのは違和感じゃない
大げさでじゃなくて…恐怖感だ。
あの前衛音楽・環境音楽のB・イーノがU2の音楽をいじりたおして
シンプルなロックを難解にしちゃったらどうしよう?
B・イーノが仲良く音楽活動・スタジオワークを行ってたのが…
ロバート・フリップとフィル・マンザネラというロック界きっての名うての
変態ギタリスト兼音楽家の2人だ。
そんなB・イーノがプロデュースするとは…
ロック好きの良い子だけじゃない、ワルだってU2の行く末を案じる展開だ。

それがどうだ!
’84年「焰(The Unfogettable Fire)」
’87年「ヨシュア・トゥリー(The Joshua Tree)」
この2連続の素晴らしさは。

そうだった!
イーノの環境音楽の手法は「ミニマル・ミュージック」だった。
同じ小節を反復する手法がミニマル・ミュージックとされる。
シンプルで短い小節が反復するオルゴールが心地良いのはミニマルだからだ。
しかし勿論U2の曲が同じパターンの繰り返しになったのではない。
絵画や建築に「ミニマリズム」という潮流がある。
U2の音楽はミニマル・デザインの家具や服のようにとてもシンプルになった。
シンプルなカットでつくったラインの服のような心地よさに溢れた音楽になった。
そしてすぐれたミニマル・デザインがそうであるようにU2のシンプルな音は…
ダイナマイトを持っていた。

そうなんだ。
B・イーノはU2の音に魔法をかけたんだ。


‘08年コールド・プレイはB・イーノがプロデュースしたアルバム「Viva la Vida」を発表した。
それまでの音楽の方向性を継続したため袋小路にはまり込んだコールド・プレイ。
連中は…古い轍にスタックしたクルマを押し出すためにB・イーノを招いた。

タイトル曲「Viva la Vida」を初めて聴いたときにうけた感覚…
洗練されたミニマル・デザインの建築や家具を体験したような感覚は今でも忘れない。
ボーカルの音量は抑えられ
ストリングス(弦楽器)の音量・音圧を際だたせていた。
ドラムは排されティンパニーが単調なビートを音圧を抑え繰り返すだけだ。
弦はとてもシャープで…エッジをたてた…”アタックの強い”演奏だった。
そう。弦はパーカッシブに…そして、音圧をあげ演奏された。
弦はシンプルな小節を繰り返しうねっていた。
風が吹いた。
弦はメロディを奏でずにビートを刻んだ。
質量もつモノも空気も区別なく共振した。
ああ…弦が打楽器になっていた。

どうしてこういうことしちゃうんだろ。
どうしてこんなステキが思いつくんだろ…ねえ、B・イーノ先生。
魔法使いじゃないかもしれないけど…近い存在だな B・イーノ先生。
ホグワーツ魔法魔術学校で教鞭をとってたのかしら。





ふう。前置きがながくなった。
いや今回はここまでがメインなんだ。
実は、この稿はB・イーノついて書きたかったんだ。
だけど適当なクリスマスソングが思いつかなかった。

そこで。ミニマル・ミュージック。
日本のミニマル・ミュージックの作曲家といったら、久石譲や坂本龍一が有名だ。
そして、久石譲はブライアン・イーノ体験の衝撃を語っていた。

ミニマル・ミュージックのクリスマス・ソングといったら真っ先に思いつくのは
坂本龍一の「戦場のメリークリスマス( Merry Christmas Mr.Laurence)」だ。

導入部は流れるシンセの中で…ピアノが短い鐘のような音を繰り返す。
たんたんと…淡々と繰り返し、打楽器のようにピアノを叩く。
次いで展開される主旋律を奏でる音はワイングラスのサンプリングだ。
そのため…主旋律は打楽器で奏でられるように聴こえる。
…音階を有する打楽器で短い和音が繰り返される
…そう。インドネシアのガムランを感じるんだよねえボクは。
いつも。

今回この稿を書くにあたり、ネットで調べてみた。
すると。
坂本龍一がNHKのクラシック音楽の番組で語ったとされる記述があった。
『普通の西洋の和音から外れたところにある東洋の和音を使ったのが
「戦場のメリークリスマス」だ。
インドネシアのガムランの和音をつかった』
しかし、これはややこしいと思った。
映画「戦場のメリークリスマス( Merry Christmas Mr.Laurence)」と同名のサウンド・トラック盤がある
つまり、坂本龍一が言ったのはタイトル曲の「戦場のメリークリスマス」のことか、アルバム全体のことなのかは判然としないんだなあ。
まあ、いいか。






’83年「戦場のメリークリスマス」公開。
’83年「クリスマス・イブ」を含むアルバム「MERODIES」(山下達郎)発売。
’84年「プライド(Pride(In The Name Of Love))」(U2)発売。
ボクは…この音楽たちにずいぶん助けられた。


ところで。
ブライアン・イーノに不満なことを書いて「メリクリ・ソング番外篇」を終えるとしよう。
Microsoft社のOS「Windows 95」の起動音を作曲したのは…B・イーノなんだ!
Mac好きのボクとすると…。
「Windows VISTA」 の起動音を作曲したのはB・イーノの盟友ロバート・フリップなんだ。
何をやってるんだ…キミたち2人は!


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メリクリ・トナカイ番外編…? 魔法使いのトナカイ…?




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