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A Towel

'13-09-01 15:30
ヘアサロンにいた

大きな鏡の前に座って髪をカットしてもらっていた

気になる時間がそろそろ始まる

カットが終わった

いつも担当してくれるスタイリストの男は
軽快なリズムで・・ボクの髪をロッドに巻き付けていった

気になる時間がそろそろ始まる
少しの憂鬱

1本のタオルが・・ボクの頭に巻かれる
これから髪にかけるパーマ液が・・顔に流れないようにせき止める
土嚢・防波堤・・の役目のタオルだ

ヒモ状に丸めたタオルを後頭部から巻き付け
タオルの両端を額のところで輪ゴムで結ぶ

魚屋のオジサンのねじりはちまきとはちょっと違う雰囲気

いつものことだ・・

ボクはそんなに多くの店に入ったことはないが・・必ずタオルを巻かれる
盛岡中でみられる光景だ
多分
もしかすると全国的にみられる光景かもしれない
メイビー

輪ゴムで結ばれたタオルの両端は・・額の前に突き出される

長い太巻き寿司のようなタオル・・じゃない
神社のしめ縄の両端をそろえたよう・・とも違う

八百屋のオジサンのねじりはちまきとは違うモード


店内には軽快なジャズが流れていた


ボクの憂鬱が幕を開けた

店内に流れるジャズから・・音楽が変わらないかとビクビクした
もし流れる音楽が変化したら・・ボクはどう対応したらいいんだ?

あの南の島の音楽
北に住むボクでも身体の中心から細胞が揺れ・跳ね・わきたつ音楽
「レ」と「ラ」を抜いた「「ドミファソシド」の独特の音階
四拍子に二拍子や三拍子が入る独特の変拍子


輪ゴムで結ばれたタオルの両端は・・額の前に突き出されている


ボクは毎回パーマ液をかける前に巻かれたタオルを見ると・・
額の前に突き出されたタオルの両端を見ると・・
沖縄民謡・・エイサーを・・太鼓を叩きながら踊る男性の・・
頭に巻かれた布の独特の形を連想してしまう


「イーヤーサーサー! ハイヤー! サーサー!」
大音量の掛け声とともに沖縄民謡の演奏が始まった・・ら、どうする?

ボクは踊らなきゃいけないんだろうか?
無理だ!
ボクにはできない

ボクは・・鏡に写るタオルを巻かれた顔から目を逸らした
いつもの・・ボクの憂鬱
タオルを巻かれて目が吊り上がった顔が恥ずかしい


みんなはどうしてる?
誰も踊ってなんかいなかった

誰かが・・タオルを頭に巻いたボクを見て笑ってないか?
誰もボクなんかみていない
みんな鏡の中の自分だけを見ていた

まるで・・これが大事なルールなんだ・・とでもいうように
鏡の中の自分だけを見ていた

ヘアサロンのルール No.1
「鏡の中の自分だけを見ているんだ
 よそ見してたら・・ロッドに隠れている悪戯好きの妖精が
 髪に変なウェーブをつけちゃうからね・・クルクルクルリン・・」
受付カウンターの上にはルール・ブックが置いてある・・かも

「大海を割りエジプトを脱出し・・
 このヘアサロンに集いし者たちよ
 汝、鏡の中の自分以外を見ることなかれ」
戒めが刻まれた石板が店の倉庫に保管されている・・かも

ルールを守らず・・戒めを破り・・
鏡の中の自分から目を逸らしてるのは・・ボクだけだ
プロバブリー


突然だった
店内に迫力のある打楽器と弦楽器の音が鳴り響いた
Hi-Fiだ・・
いや原音だ・・
そうライブ演奏だ・・

甲高いの指笛の響きと同時に大きな声が聴こえた
「イーヤーサーサー! ハイヤー! サーサー!」

そんなー・・無理だって・・オレは踊れないって・・

「イーヤーサーサー! ハイヤー! サーサー!」


過ぎゆく夏の背に声をかけるように・・

イーヤーサーサー! ハイヤー! サーサー!
イーヤーサーサー! ハイヤー! サーサー!
イーヤーサーサー! ハイヤー! サーサー!


Summer is gone

R0014008 のコピー.jpg


上々颱風 「銀の琴の糸のように」



【蛇足】

クルマから降りて運転席のドアを閉め
ウインドウに写る自分を見た
brand -new hair 
フフッ

玄関を開けると聞き慣れない音楽が聴こえてきた

リビングに入ると・・マルが踊っていた
ボクサーのようなトランクスを履き
左右の後ろ足には・・足首から足甲を覆うサポーターをつけていた

後ろ足で立ち・・前足を上下させ・・身体をくねらせて踊るマル
ムエタイの選手が試合前に踊る「ワイクルー」だった

マルは頭にタオルを巻いていた
輪ゴムで結ばれた・・タオルの両端が突き出ていた
タオルの両端は額の前じゃなく・・頭の後ろで結ばれていた


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