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a period

金曜日の真夜中だった

雨が降ってきた

はじめは、路上でダンサーがタップを刻むような雨音だった

それが突然

せき止めていたダムの放流のような・・空からの放流のような雨になった

空の水道局が水圧を上げて・・雨の蛇口をめいっぱいに開けたんだ

「うるさくて眠れないから雨の蛇口を閉めてくれ」


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こここまで・・

テキストエディタで文章を書きながら・・思った

いつものことだが今回もブログの文章には句点がない

句読点が苦手だからだ

ボクだって仕事で作成する文章には句読点を使ってる

コトの善し悪しは別にして・・履行しなきゃならないルールや大人の事情があるとすれば
「文章には句読点を使う」 これも大人の事情なのだろう

文意を過不足なく相手に伝えるために読点を意図的・効率的に打つ
ひとかたまりの文意が終了するときには文末に句点を打ち終了を告げる

うーん・・これが苦手だ
特に句点が


・・じゃなかったのか。 疑問形の文末に句点を打つと重くなる

・・青い。形容詞に句点を加えると風合いが損なわれる感じ

・・な真実。 もともとが偉そうな感じの体言止めなのに・・句点を打ったらなおさら偉そうだ

句点を打つと・・断言してるっていうか・・威張ってるように感じる

ハイこの件は終了・・だから終了なんだって・・断言するよ・・終了だよ句点を打ったんだから
そりゃ他にも意見はあるだろうさ、ただ効率的に文意を終えるには・・ここで句点なんだ
ハイハイ次の案件に移るよ
だからさ・・その案件はもう終わったんだ・・句点を打ったんだから


句点自身は威張ってるわけじゃないだろう・・つきあってみると意外に気さくなヤツかもしれない

句点に・・
言っておかなくちゃ
ボクは君が嫌いなんじゃない・・全然嫌いなんかじゃないんだ
ちょっと苦手なだけだ

道で会っても挨拶以外はかわさない知人のような存在なんだ


ボクが。思考を。展開す。る。。リズム。が。句点の。挿入で。で。で。。。

『なんだコレ・・?』

不必。。要な。句点。。が。画。面。に。。
出て。。。く。る。。の。は。。。どう。し。。て。なん。だ。だ。だ。。。?

ボクは思った
文字をタイプせずに心の中で・・こう思った

『この文章を書いてるテキストエディタ内のプログラムのどこかに・・
「句点の蛇口」があって・・その蛇口を句点のヤツがめいっぱい開けて
 それで・・大量の句点が蛇口から流れてきて溢れたんだ・・』
。。。
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「メーデー・メーデー・・大変だ・・助けて。。。。。。く。。れ。。。」
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テキスト・エディタの画面は句点で溢れた

句点に溺れないよう高速でタイプした・・そして多めに句点を打った

「ボクは君を嫌ってなんかいない。ちょっと苦手なだけだ。それだけだ。」

数秒後に・・句点の豪雨はやんだ


ボクがキーボードをタイプしていないのに・・・・・
画面に文字が表示された

「句点」がタイプした文だった

君は。句点、は使わないけど、・・・や…は好んで使う。のに。フンッ。だ。

句点のヤツは・・ふんだんに句点を盛り込んできた
句点の配置はデタラメだった

まるで・・味の組み合わせを無視して盛り込んだ海鮮丼のように


【蛇足】

午後の陽差しのなかでマルは・・

草野心平の詩集を床に広げて読んでいた

マルがボクを見ながら・・右前足で詩集のページを叩いていた


マルが叩いていたページには「冬眠」という詩があった

奇妙な詩だった

356px-Toumin_kusano のコピー.jpg


ボクはマルに聞いた

「コレは詩?」

「無論・・詩人が詩集で発表してるんだぞ」

「・・・・・」

「オマエはこの黒い丸は何だと思う?」


ボクは思いついた順に・・頭に浮かんだイメージを言った

「ホクロ」

「世界に通じる覗き穴」

「虫眼鏡を通過して紙面に残った太陽のエネルギー」

「スイッチ・・紙面の●を押せっ・・今すぐって詩人は叫んでる」

「万年筆のペン先で詩人が紙面に打ち付けたビートの跡・・」

「・・黒い・・句点・・えっ?」


ボクはあることに思い至った

「なあマル・・この詩にはさ・・句読点を打つことができないな?」

「この詩人も・・句読点が苦手だったとか?」

「大きな句点1個を・・しかも内部を黒く塗りつぶしてるから・・内部には」

「何も足せない・・」

「黒い句点1個で・・詩は始まり詩は結ばれている・・始まりと終わりを表す黒い句点」

「・・冬眠の始まりと終わりは眠ってる時間の中では同一だ・・区別がつかない」

「始まりであり終わりである・・終わりであり始まりである・・」


それ以上はお互いに何も話さなかった


しばらくして・・ボクはマルに聞いた

「詩が・・好きなのか?」

「無論」

「誰の詩が?」

「ランボー、ヴァレリー、萩原朔太郎、佐藤春夫、金子光晴・・・・・」

「どれも知らないよ・・」

「それじゃ、オマエの好きな詩人は・・いったい誰なんだ?」

「ジョン・レノンだろ・・ボブ・ディラン・・うーんと・・レオン・ラッセルと・・ボノ・・
 それから・・忌野清志郎と桜井和寿かな・・」

「素晴らしい・・彼らの作品は・・オレのココに届く詩だ」
マルは右前足で拳をつくると・・左胸をトントンと叩いた

ボクは続けた

「女流詩人なら・・中島みゆきと荒井由実かな・・」

「素晴らしい・・それと・・」

「それと・・誰?」

「吉田美和」


日はとっぷりと暮れ部屋も暗くなったので明かりをつけた

マルが右前足を挙げて・・上を見ろとしぐさでうながした

天井に嵌めこまれた丸い窓は・・黒い句点だった

真っ黒で何も見えないが・・疑いなくそれは空と星を望む句点だった


Leon Russell 「 Tight Rope 」




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