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A Crisis

まだ20代だったときのことだ

ある城下町に在る町家の界隈をクルマで走っていた
運転はボク、助手席には友人
一方通行の細い道に入った
クルマ1台分がぎりぎりの道幅だった


前方に一方通行の道を逆走して向かってくる1台のクルマが見えた

「えっ、何だよアイツ、ここはイッツーだろ、知らねーのかよ・・」

クラクションを押そうとした手を止めた


ベンツのEクラスだった・・色はなんと・・ピンク!

メルセデスのカラー・ラインナップにピンクがあるのか・・
再塗装なのか・・

運転しているのは太った中年男、ツルツルに剃った頭に黒サングラス
助手席にはもっと年かさの痩せた男、こっちもツルツル頭に黒サングラス
こんなルックスの方々がピンクのベンツEクラスに乗ってやってきた

キツイ・・状況だ

見た印象からは・・第一次、二次、三次産業のどれにも属していなさそうな方々
負のサービス業の方々だろうか?
基本給なし、有給休暇なし、労働組合なしの業界の方々だろうか?

そんな容姿の方が・・ピンクのベンツEクラスに乗って・・一方通行を逆走してきた

キツイ・・


クラクションなんか押すわけがない
5年落ちトヨタ・カローラのシフト・レバーを左手で握り
ギアを3速からリバースに入れバックを始めた・・


クラクションの音が聞こえた

勿論ボクじゃない!

またクラクションの音が聞こえた・・外から聞こえる!

後方からこっちに向かって来るクルマがルーム・ミラーに写っていた


オイ・・後ろからクルマがこっちに来てるよ

そりゃそうだ、それが正しいこの道の進行方向なんだから
ツルツル頭・黒サングラス・ピンクベンツEクラスが後ろのクルマからは見えないんだろうし
クラクションも鳴らすだろうさ

一方通行をバックで逆走してくる不審なクルマに出会ったら
ボクならどうする?
そう、クラクションを鳴らす

仕方ない・・ブレーキを踏んでクルマを停めた

助手席の友人にボクは言った 「おい!」
友人はほぼ同時にボクに言った 「どうしよう?」

ヤベエ・・かなり

その時ボクは見た
ピンクのベンツEクラスを運転席する男が笑ったのを
唇の右端がつり上がっていた・・

「笑ってる・・?」と、ボク
「イヤ。怒ってる顔だろ・・?」と、友人

そのときだ
またクラクションの音が響いた
さっきとは違うサウンドだ・・しかもたて続けに3回
クラクションを鳴らしたのは・・前方からやって来るピンクのベンツEクラスだった!

友人が正しかった、運転席の男は笑ってなんかいなかったんだ


「行けッ」ボクは叫んだ
助手席から友人が外に飛び出て後ろへ走りだすと同時にクルマのバックを再開した

友人が後ろのクルマの連中に説明していた

後方のクルマはすぐにバックを始めた

2台のクルマが逆走バックでその道から脱出した


数分後・・
汗も引き気分も落ち着き、友人に聞いた

「後ろから来たクルマさ、オマエが話したら文句も言わずにすぐバックしたよな。
 オマエさ・・何て説明したの?」

「・・ありのまま」


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'80~'90年代前半までは、ある職業のヒトがその職種特有の雰囲気をまとっていた最後の時代じゃないだろうか?
それから後の時代のことだ・・その人の職業を聞いて
「えっ、みえないねぇ」 なんて会話が頻繁に交わされるようになったのは

'80~'90年代前半までは、怖い方々は・・怖い身なりと行動でサインを送っていた
だから近づかなくてすんだ

考えてみて欲しい
胃潰瘍にサインとしての「痛み」がなかったら
胃に穴があくまで気がつかない

これは危険なことだ・・とても

ノー・サインのプレーには危険がある・・


JAWS 「Theme From Jaws」



【蛇足】

ところで・・近年、オトコもオンナも見た目が若作りになってないか?
危険だ・・


ボクは、酒場のカウンターで1人飲んでいた
右隣は空席でさらに右隣は女性が1人で飲んでいた

「先月も1人で来てましたよね?」

「は・・?」

「ほら、先月の最後の金曜日・・その時も話しましたよね?」

「いいえ。人違いでしょ・・」

カウンターの向こうの店主がボクの記憶を否定した
その日にボクはこのカウンターにいたらしい
そして彼女と話していたらしい

それから彼女との会話が始まり30分くらいしたときだ

「わたしがいくつ(何歳)かあててみて・・」

『興味ない』

とは・・言わなかった
ボクだって無意味な諍いは避けたい

そして、この質問には慎重な考察を加えないと危険だ

この手の質問をしてくる女性は実年齢より若く間違えられるのを経験している
それだけじゃない・・
間違えられることを期待しているんだ

ボクは彼女を見て慎重に値踏み・・いや年齢読みをした
サバ読みしてる女性の年齢読みだ・・慎重にコトを進めないと
考察の結果は・・40才が妥当な線だろう・・まっ、間違いないな

そこから、5才を引いたら彼女も満足だろう・・考察から導いた結論だ

ボクは自信を表情から消し、さりげなく言った

「35歳・・かな?」

ほら・・次は君が実年齢を言う番だ
君の年齢を聞いたボクが大袈裟に驚いてみせて、こう言うからさ
エッ、嘘でしょ?ホントに・・いや、全然みえないよ・・

ところが・・35歳というサービス年齢を聞いた彼女は、不機嫌に言った

「33歳だもん!」

それでも・・数秒後には彼女の機嫌はなおった
回復が速かった
ダウンはしたけど、レフェリーがカウントを数える前に立ち上がった彼女は
こう・・言った

「あっ分かった、分かった。ふざけてたんでしょ?そうでしょ、そうでしょ?」

そう、ボクはふざけていた
ふざけてなかったら、40歳と思ったのに35歳とは言わない

若作りはするなら実年齢より若く作ってもらわないと・・危険だ
周囲の空気が緊迫する・・実年齢が分かるサインをくれ!


タグ:GR

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