カウンター・・にて
数日前に新宿ゴールデン街で或るバーの灯が消えた。
バーの名は「酒場G」
半世紀以上も前に”蛙の詩人”が開いた酒場だった。
カウンター席は6席の小さな店。
ここで半世紀以上もママをしていたR子さん。
カウンターの内側に立つ彼女を囲んでカウンター席に馴染客が集った。
この酒場を開いた詩人についてR子さんは言っていた。
「素敵なひとでしたよ・・ダメもいっぱいあるひとだけど、でもだから・・魅力的っだったのね。
周りにも面白い男どもがいっぱいいましてね・・」
***
この酒場Gに40年以上通いつめた書籍装丁家のYさん。
人生の上手のヒト。
ん。上手・・?
器用?違うな。
手際が良い?違うな。
あっぱれ?そうそう、それだ!
いつも楽しそうだし、実際・・「楽しいな」が口癖のYさんだ。
「いいか。酒はどんな酒でも全部美味い!
これから経験することは全部楽しい!
世界はステキで満ちている!」
天使が還暦を迎えたような方。
釈迦が修行もしないで解脱したような方。
こう聞いてきそうだ。「解脱って、それ楽しいのか?」
彼は世界に満ちている歓喜と哄笑を楽しんでいた。
3流の大人で1流のオトコ。
***
カウンターの端に座ってiPhoneを右耳にあて笑いながら話してる男。
いつも誰にも穏やかに接する馴染みの客。
あんな笑顔の男が・・
英・米・仏・独・伊・・語のどれもが不如意なあの男がかつて・・
欧州全域で活動したスパイだったら・・?
その想像に・・オレの”不意打ち脳”が勝手に反応した。
映像まで見えてきた。
そのときちらりと思った。
ああ・・あの男は奥州の出身だった・・
カウンターの端で電話をしている男がいた。
ベルリンの壁が崩壊するする前から東京に住みついた某国のスパイだった。
長年にわたる諜報活動や破壊工作に身を投じた者には・・
それ相応の陰影が刻まれるものだが彼の穏やかな顔にはその陰影がない。
今夜も…盗聴防止機能なし・GPS機能オンの普通のiPhoneでノーテンキに通話しているしまつだ。
そして・・任務中でも酔うのだ、しかもしたたかに。
翌朝には前夜の出来事は床が抜け落ちるようにごっそりと記憶から消えていた。
スパイが酒で記憶を失ってどうする!
彼は猜疑心より良心が溢れる3流のスパイだ。
彼は諍いより信頼を大切にする3流のスパイだ。
彼は裏切り方を知らない3流のスパイだ。
一方正体を隠すカバーとして従事しているグラフィック・デザイナー業はセンスも技倆も1流の男だ。
彼のコードネームは"善きサマリア人"
「酒場G」に長閑と白熱、そして安堵を招じ入れた男だ。
***
あと数日で・・この酒場は半世紀以上の歴史を閉じる。
カウンター6席の小さな店にだって・・いやだからこそ思い出はある。
考えてみてほしい。
30を幾つか越してもこの酒場に入れば小僧だ・・
その小僧が30年も通いつめればイヤでも大人になる。
大人なら思い出の1つや2つはあるもんだ。
その酒場が数日後には"店じまい”だった。
R子ママ「君は何を飲んでいるの?」
H「焼酎を涙で割って飲んでる。なんか悲しくて」
R子ママ「うん」
H「・・・」
R子ママ「でもいいわ、もう充分いい男に逢ったから」
H「・・・」
R子ママ「もう脚が悪くなってしまって、恋人が逃げてもあたし追いかけられない」
M「恋人に追いかけてもらえばいいのに」
H「あるいは、R子さんより脚の悪い男を恋人にすればいい」
M.K.@うずまき堂
オレか?
カウターである客にこう言われたことがある。
「C君ってさあ・・悪いヒトじゃない、どっちかていうと良いヒトだ。
けどね・・胡散臭いんだよね・・」
せめて・・怪しいにしてもらえませんかねえ、小姐。
この店に集まる客筋によるものか・・客の職業柄か・・
話し上手の聞き上手・・議論・検証・考察好きの争い嫌いの連中がカウンターに集っていた。
その点、オレの話しは縦横無尽で・・いや嘘だ。とりとめがない。
・・でもさ。胡散臭いってさあ!
話し上手・・聞き上手・・かあ。うん。オレには無理だな。
オレの"身勝手脳"がまた・・反応して映像がみえてきた。
新宿ゴールデン街のバー「ガオー」の馴染み客にジョイスさんという
アイルランド生まれの作家がいる。
彼は東京に住んで10年になるがまだ日本語があやしい。
Tさんと一緒に旅行へ行き旅館に泊まったときのことだ。
普段ベッドに寝ているジョイスは布団の寝心地に感動して叫んだ。
「トコジョーズ!」
Tさんは慌てた。
こら。ジョイス、大きな声を出すんじゃない。
誰だ?” 床上手 "なんて変な日本語をコイツに教えたヤツは!
良い塩梅の年増の小姐は断言するように言った。
「C君・・アンタにきまってるでしょうが!
そんな変な日本語をおしえるのは!」
バーの名は「酒場G」
半世紀以上も前に”蛙の詩人”が開いた酒場だった。
カウンター席は6席の小さな店。
ここで半世紀以上もママをしていたR子さん。
カウンターの内側に立つ彼女を囲んでカウンター席に馴染客が集った。
この酒場を開いた詩人についてR子さんは言っていた。
「素敵なひとでしたよ・・ダメもいっぱいあるひとだけど、でもだから・・魅力的っだったのね。
周りにも面白い男どもがいっぱいいましてね・・」
***
この酒場Gに40年以上通いつめた書籍装丁家のYさん。
人生の上手のヒト。
ん。上手・・?
器用?違うな。
手際が良い?違うな。
あっぱれ?そうそう、それだ!
いつも楽しそうだし、実際・・「楽しいな」が口癖のYさんだ。
「いいか。酒はどんな酒でも全部美味い!
これから経験することは全部楽しい!
世界はステキで満ちている!」
天使が還暦を迎えたような方。
釈迦が修行もしないで解脱したような方。
こう聞いてきそうだ。「解脱って、それ楽しいのか?」
彼は世界に満ちている歓喜と哄笑を楽しんでいた。
3流の大人で1流のオトコ。
***
カウンターの端に座ってiPhoneを右耳にあて笑いながら話してる男。
いつも誰にも穏やかに接する馴染みの客。
あんな笑顔の男が・・
英・米・仏・独・伊・・語のどれもが不如意なあの男がかつて・・
欧州全域で活動したスパイだったら・・?
その想像に・・オレの”不意打ち脳”が勝手に反応した。
映像まで見えてきた。
そのときちらりと思った。
ああ・・あの男は奥州の出身だった・・
カウンターの端で電話をしている男がいた。
ベルリンの壁が崩壊するする前から東京に住みついた某国のスパイだった。
長年にわたる諜報活動や破壊工作に身を投じた者には・・
それ相応の陰影が刻まれるものだが彼の穏やかな顔にはその陰影がない。
今夜も…盗聴防止機能なし・GPS機能オンの普通のiPhoneでノーテンキに通話しているしまつだ。
そして・・任務中でも酔うのだ、しかもしたたかに。
翌朝には前夜の出来事は床が抜け落ちるようにごっそりと記憶から消えていた。
スパイが酒で記憶を失ってどうする!
彼は猜疑心より良心が溢れる3流のスパイだ。
彼は諍いより信頼を大切にする3流のスパイだ。
彼は裏切り方を知らない3流のスパイだ。
一方正体を隠すカバーとして従事しているグラフィック・デザイナー業はセンスも技倆も1流の男だ。
彼のコードネームは"善きサマリア人"
「酒場G」に長閑と白熱、そして安堵を招じ入れた男だ。
***
あと数日で・・この酒場は半世紀以上の歴史を閉じる。
カウンター6席の小さな店にだって・・いやだからこそ思い出はある。
考えてみてほしい。
30を幾つか越してもこの酒場に入れば小僧だ・・
その小僧が30年も通いつめればイヤでも大人になる。
大人なら思い出の1つや2つはあるもんだ。
その酒場が数日後には"店じまい”だった。
R子ママ「君は何を飲んでいるの?」
H「焼酎を涙で割って飲んでる。なんか悲しくて」
R子ママ「うん」
H「・・・」
R子ママ「でもいいわ、もう充分いい男に逢ったから」
H「・・・」
R子ママ「もう脚が悪くなってしまって、恋人が逃げてもあたし追いかけられない」
M「恋人に追いかけてもらえばいいのに」
H「あるいは、R子さんより脚の悪い男を恋人にすればいい」
M.K.@うずまき堂
オレか?
カウターである客にこう言われたことがある。
「C君ってさあ・・悪いヒトじゃない、どっちかていうと良いヒトだ。
けどね・・胡散臭いんだよね・・」
せめて・・怪しいにしてもらえませんかねえ、小姐。
この店に集まる客筋によるものか・・客の職業柄か・・
話し上手の聞き上手・・議論・検証・考察好きの争い嫌いの連中がカウンターに集っていた。
その点、オレの話しは縦横無尽で・・いや嘘だ。とりとめがない。
・・でもさ。胡散臭いってさあ!
話し上手・・聞き上手・・かあ。うん。オレには無理だな。
オレの"身勝手脳"がまた・・反応して映像がみえてきた。
新宿ゴールデン街のバー「ガオー」の馴染み客にジョイスさんという
アイルランド生まれの作家がいる。
彼は東京に住んで10年になるがまだ日本語があやしい。
Tさんと一緒に旅行へ行き旅館に泊まったときのことだ。
普段ベッドに寝ているジョイスは布団の寝心地に感動して叫んだ。
「トコジョーズ!」
Tさんは慌てた。
こら。ジョイス、大きな声を出すんじゃない。
誰だ?” 床上手 "なんて変な日本語をコイツに教えたヤツは!
良い塩梅の年増の小姐は断言するように言った。
「C君・・アンタにきまってるでしょうが!
そんな変な日本語をおしえるのは!」
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楽しい! はとってもいいです!
おいら 最期の言葉 楽しかった〜
って言うの 目標です
by ねこじたん (2013-11-04 20:22)
ピースの缶懐かしいです。昔相棒がピースの缶を部屋の鴨居にぐるりと並べて置いていました。今は禁煙ですが。
by JUNKO (2013-11-04 21:19)
「3流の大人で1流のオトコ」 憧れますね。
床上手には笑わされました(^^)ニコ
by johncomeback (2013-11-05 09:35)
胡散臭いより、怪しいが、断然いいです
いいひとより、良い人より、怪しいがいいのです
by engrid (2013-11-06 01:30)
こんばんは。ご訪問ありがとうございました。
新宿ゴールデン街を記事にしたことがありますが、下戸ゆえ外側しか知らず、これほどの洞察は持ちません。でも、同時代の郷愁は感じています。
by sig (2013-11-09 17:40)
50歳を過ぎてから いぶし銀のような殿より
高田純次のような殿が好きになりました。
胡散臭いより 懐の広い殿が好きです。
by ゆうみ (2013-11-11 14:59)